
バイクのブレーキエア抜きで何度やってもレバーが固くならない、スカスカな感触が取れない――そんな悩みを抱えるライダーは多いです。特にリアブレーキのエア抜きで固くならない状況は、ホースの取り回しが原因で起こりやすく、通常の手順だけでは解決しにくいケースがあります。
この記事では、エア噛みの原因と症状から、基本のエア抜き手順、バンジョーボルトや注射器を使った応用テクニック、一晩置く方法、プロに依頼する場合の工賃まで網羅的に解説します。
この記事でわかること
- バイクのブレーキエア抜きで固くならない根本的な原因
- 正しいエア抜きのやり方と状況別の応用テクニック
- エア噛みの症状を正確に見抜くためのチェック方法
- プロにメンテナンスを依頼する際の費用感とメリット
バイクのブレーキがエア抜きで固くならない主な原因
- バイクのブレーキがエアを噛む原因は何ですか?
- バイクブレーキのエア噛みで起こる症状
- ブレーキのエア抜きをしないとどうなる?
- 基本的なバイクのブレーキエア抜きやり方
- バイクのブレーキのエア抜きの順番は?
- バイクのエア抜きのコツは?
バイクのブレーキがエアを噛む原因は何ですか?
ブレーキレバーが固くならない最大の原因は、ブレーキライン内に空気が混入する「エア噛み」です。エアが混入する主な原因は3つあります。
1つ目はブレーキフルードの劣化です。フルードは吸湿性が高く、水分を吸収すると沸点が低下します。ブレーキング時の熱でフルードが沸騰し、気泡が発生してエア噛みを引き起こします。
2つ目はゴム製シールの劣化です。マスターシリンダーやキャリパーのピストンシールが硬化・ひび割れすると、隙間からエアを吸い込みます。転倒によるダメージでも同様です。
3つ目はメンテナンス時の作業ミスです。エア抜き中にリザーバータンクのフルードを切らしたり、ブリーダーボルトの操作を誤ったりして、かえってエアを吸い込むケースも少なくありません。
ブレーキフルードは定期交換が必須
ブレーキフルードは走行距離にかかわらず時間経過で劣化します。一般的には2年に1回の交換が推奨されており、車検ごとの交換が目安です。(参照:本田技研工業株式会社 公式サイト)
バイクブレーキのエア噛みで起こる症状
エア噛みが起こると、ブレーキ操作に明確な異常が現れます。これらの症状に気づいたら放置は厳禁です。
最も代表的な症状は、ブレーキレバーの感触が「スカスカ」「フワフワ」になることです。正常ならレバーを握り込むとカチッと固くなりますが、エア噛みではグリップに付くほど深く握れてしまいます。
これにより制動力も低下します。レバーを握ってから制動が始まるまでにタイムラグが生じたり、普段の力では十分な制動力が得られなくなります。握った力がライン内のエアの圧縮に使われ、ブレーキパッドへ十分に圧力が伝わらないためです。
「あれ、いつもよりブレーキが深いな?」と感じたら、エア噛みのサインかもしれません。走行前にブレーキレバーを数回ニギニギして、握りしろに変化がないか確認する習慣をつけましょう。
ブレーキのエア抜きをしないとどうなる?
エア噛みを放置して走行を続けることは極めて危険です。制動距離が大幅に伸び、追突事故のリスクが格段に高まります。
さらに恐ろしいのが「ベーパーロック現象」です。長い下り坂などでブレーキを多用すると、熱で劣化したフルードや混入エアが沸騰・膨張し、ブレーキが完全に効かなくなります。(参照:JAF クルマ何でも質問箱)
ブレーキの異常は命に関わります
ブレーキはバイクの最重要保安部品です。少しでも「おかしい」と感じたら走行を中止し、安全な場所に停車して点検するか、バイクショップに相談してください。
基本的なバイクのブレーキエア抜きやり方
最も基本的なブレーキのエア抜き方法を解説します。作業自体はシンプルですが、丁寧さが求められます。
準備するもの
- バイクに適合した新品のブレーキフルード(DOT4が一般的)
- ブリーダーボルトに合うサイズのメガネレンチ
- 廃油を受ける容器(ペットボトル等)と透明な耐油チューブ
- リザーバータンクの蓋を開けるためのドライバー
- ウエス(フルードの飛散・付着防止に多めに用意)
作業手順
養生:ブレーキフルードは塗装面を侵すため、リザーバータンクやキャリパー周辺をウエスでしっかり保護します。
フルード交換:リザーバータンクの蓋を開け、古いフルードをスポイトで抜き取り、新しいフルードを上限レベルまで注ぎます。
チューブの接続:キャリパーのブリーダーボルトにメガネレンチをかけ、透明チューブを接続。反対側は廃油受けへ入れます。
エア抜き作業:「レバーを数回握って圧をかける → 握ったまま保持 → ブリーダーボルトを少し緩めてフルードを出す → すぐに締める → レバーを離す」を繰り返します。
確認:チューブから出るフルードに気泡が混じらなくなれば完了です。作業中はリザーバータンクのフルードを切らさないよう、こまめに補充してください。
最後にブリーダーボルトを本締めし、リザーバータンクの油量を調整して蓋を閉めれば完了です。
バイクのブレーキのエア抜きの順番は?
効率良く確実にエアを抜くには、原則として「マスターシリンダーから最も遠いキャリパー」から始めるのがセオリーです。フロントがダブルディスクブレーキの場合を例に説明します。
マスターシリンダーから遠い方のキャリパー:ブレーキホースの分岐点から距離が長い方から作業を開始します。
マスターシリンダーに近い方のキャリパー:次にもう一方のキャリパーのエア抜きを行います。
マスターシリンダー本体:最後にブレーキレバーを小刻みに何度も握り、リザーバータンク内に気泡が上がってこなくなるまで続けます。
ABS搭載車の場合
ABS搭載バイクはABSユニット内にエアが混入すると、通常のエア抜きでは完全に除去できません。専用の診断機が必要になるため、ABS搭載車のフルード交換やエア抜きはバイクショップに依頼するのが安全です。(参照:ボッシュ株式会社 公式サイト)
バイクのエア抜きのコツは?
エア抜きを確実に成功させるための3つのコツを紹介します。
第一に、焦らずゆっくりと作業することです。レバーを素早く操作するとフルードが泡立ち、新たなエアが発生します。握る時も離す時もゆっくりとした動作を心がけてください。
第二に、ブリーダーボルトの操作は一瞬(1/4回転程度)で十分です。緩めすぎるとネジの隙間からエアを吸い込みます。ブレーキレバーを握って圧力がかかっている間にボルトの開閉を完結させることが最重要ポイントです。
作業の連携プレイ
二人で作業できるなら、一人がレバー操作、もう一人がブリーダーボルト操作に専念するとミスが格段に減ります。「握って!」「緩めて!」「締めた!」「離していいよ!」と声を掛け合いましょう。
第三に、リザーバータンクのフルードレベルに常に注意を払いましょう。フルードを切らすのが最もよくある失敗です。常に下限レベル以上を維持してください。
それでもバイクブレーキのエア抜きで固くならない時の対処法
- バイクのリアブレーキエア抜きが固くならない
- ブレーキがスカスカな時に試すバンジョーボルトのエア抜き
- 注射器を使ったエア抜きのやり方
- ブレーキエア抜きで一晩置く方法の効果
- バイクのブレーキエア抜きにかかる工賃
- バイクブレーキのエア抜きで固くならない問題の総括
バイクのリアブレーキエア抜きが固くならない
フロントは成功したのにリアブレーキのエア抜きだけ固くならない、というケースは珍しくありません。リアブレーキにはエアが抜けにくい構造的な理由があります。
多くのバイクではリアのマスターシリンダーが低い位置にあり、ブレーキホースが一度上に持ち上がってからキャリパーに向かいます。この「U字」になった部分にエアが溜まりやすいのです。
またリアのリザーバータンクはフロントより容量が小さいため、少しの作業でフルードが空になりやすく、知らぬ間にエアを吸っていることもあります。フロント以上にこまめなフルード補充が必要です。
リアブレーキエア抜きの裏ワザ
どうしてもエアが抜けない場合、キャリパーをスイングアームから外し、ブリーダーボルトがブレーキラインの最高点に来るよう持ち上げて作業すると効果的です。キャリパー内のエアがブリーダーボルトから排出されやすくなります。
ブレーキがスカスカな時に試すバンジョーボルトのエア抜き
通常のブリーダーボルトからのエア抜きを何度行ってもスカスカな場合、ブレーキホースを接続している「バンジョーボルト」の接続部にエアが溜まっている可能性があります。特にマスターシリンダー側はシステムの最高位置になることが多く、しつこいエアが残りやすい場所です。
バンジョーボルトからのエア抜き手順
徹底的な養生:バンジョーボルトを緩めるとフルードが勢いよく漏れるため、周辺を大量のウエスで覆い塗装面を完全に保護します。
圧力をかける:ブレーキレバーを強く握り、ライン内に圧力をかけた状態を保持します。
一瞬緩める:レバーを握ったまま、バンジョーボルトを1/8回転ほど緩めます。「プシュッ」と音がしてエアが抜けたら、すぐに締めます。
この作業を数回繰り返すと最後のエアを追い出せます。ただしフルードが飛散しやすく、ボルトの締め付けトルク管理もシビアなため慎重に作業してください。
注射器を使ったエア抜きのやり方
注射器(シリンジ)を使うと、より強制的にエア抜きが可能です。主に2つの方法があります。
方法1:下から圧送する方法
キャリパー側から新しいフルードを注入し、エアをマスターシリンダー側へ押し出します。エアは自然と上に向かう性質があるため、理にかなった方法です。
リザーバータンクの蓋を開け、古いフルードを抜き取ります。
注射器に新品フルードを満たし、チューブを介してブリーダーボルトに接続します。
ブリーダーボルトを少し緩め、注射器でゆっくりとフルードを注入します。
リザーバータンクに気泡とともにフルードが上がってくるのを確認。気泡が出なくなれば完了です。
方法2:上から吸引する方法(負圧式)
ブリーダーボルト側から注射器でフルードとエアを強制的に吸い出す方法です。
リザーバータンクに新しいフルードを十分に満たします。
ブリーダーボルトにチューブと空の注射器を接続します。
ブリーダーボルトを少し緩め、注射器を引いてライン内のフルードとエアを吸い出します。
リザーバータンクのフルードが無くならないよう、常に補充しながら行います。
ブレーキフルードに適合した耐油性の注射器とチューブを使用してください。作業後はブレーキクリーナーで付着したフルードを完全に洗浄しましょう。
ブレーキエア抜きで一晩置く方法の効果
あらゆるエア抜き方法を試してもスポンジーな感触が残る場合、「一晩置く」方法が有効です。
やり方はシンプルで、エア抜き作業後にブレーキレバーを握った状態で輪ゴムやタイラップで固定して一晩放置します。常に圧力がかかった状態を保つことで、ブレーキホースの壁面に付着した微細な気泡がじわじわとシステムの高い位置へ集まります。
翌朝、固定を外してマスターシリンダー付近を軽くコンコンと叩いたり、レバーを数回ポンピングすると、リザーバータンクに最後の気泡がポコッと上がってくることがあります。これでカチッとした完璧なブレーキタッチが手に入ることが多いですよ。
この方法はフルード漏れがないか確認するリークテストも兼ねています。一晩置いてレバーがスカスカに戻る場合は、どこかの部品が劣化している可能性が高いと判断できます。
バイクのブレーキエア抜きにかかる工賃
セルフメンテナンスで解決しない場合は、無理せずプロに依頼するのが最善です。工賃の目安は以下のとおりです(店舗・車種により変動)。
| 作業内容 | 工賃の目安(フルード代別途) |
|---|---|
| フロントブレーキ(シングルディスク) | 2,000円 ~ 4,000円程度 |
| フロントブレーキ(ダブルディスク) | 4,000円 ~ 8,000円程度 |
| リアブレーキ | 2,000円 ~ 4,000円程度 |
| 前後セット | 5,000円 ~ 10,000円程度 |
上記はフルード交換・エア抜きの基本料金です。マスターシリンダーやキャリパーのオーバーホールが必要な場合は、部品代と追加工賃が発生します。
プロに依頼するメリットは確実性と安心感です。専用のバキュームブリーダーで個人では抜ききれないエアも確実に除去でき、根本原因の診断もしてもらえます。
バイクブレーキのエア抜きで固くならない問題の総括
この記事の要点を以下にまとめます。
- ブレーキが固くならない最大の原因はブレーキライン内へのエアの混入である
- エア混入はフルードの劣化やシールの劣化、作業ミスなど多岐にわたる
- エア噛みの主な症状はレバーのスカスカ感と制動力の低下
- エア噛みを放置するとベーパーロック現象でブレーキが効かなくなる危険がある
- エア抜きの基本は「遠い所から」「フルードを切らさず」「ゆっくり丁寧に」
- ダブルディスクの順番はマスターシリンダーから遠い方が先
- レバー操作はゆっくり行い、ボルトの開閉はレバーを握ったまま完結させる
- リアブレーキはホースの取り回し上、エアが溜まりやすい構造を持つ
- キャリパーを外してブリーダーボルトを最高点にするとエアが抜けやすい
- 通常のエア抜きでダメな場合、バンジョーボルトからエアを抜く方法が有効
- 注射器を使えば下から圧送、または上から吸引して強制的にエア抜きが可能
- レバーを握って一晩置くと、微細なエアが浮き上がりやすくなる
- セルフメンテナンスが困難な場合は迷わずプロに依頼すべき
- プロの工賃は1キャリパーあたり2,000円からが目安となる
- 安全は何物にも代えがたい、ブレーキの違和感は絶対に放置しないこと